iPhone + iOS 5 バッテリー問題改善に至る軌跡
〜 本当の問題点とは?たったひとつの劇的改善例とは?
このエントリー内の検証ならびに改善例は、あくまでも私の環境では改善しただけの話であって、同様の不具合で困っているユーザーさんすべてが改善する保証にはならないことを申し上げておきます。参考になれば幸いです。
iOS 5.0になってからというもの、バッテリーに関する問題が指摘されてしばらく経ちます。
みなさんの iPhone の状況はいかがでしょうか?私の iPhone は絶不調。。。でした。
さまざまな情報とかを参考にしながらある程度結果を予測しながらいくつかの方法を試してみましたが、バッテリー問題が劇的に改善された1つの事例と出会うことができましたことをまずご報告しておきます。
その改善例について今日はお話ししたいと思います。
バッテリー問題改善策についてお話する前に。
その前に大事なことをまずお話しておきたいと思います。
これだけバッテリーに関するエントリーが多い中、大きくふたつの問題が指摘されています。
・使う前提のバッテリー消耗が以前に比べて大きくなったのではないかという指摘
・使わない前提のバッテリー消耗が以前に比べて大きくなったのではないかという指摘
これを混同してこの問題を見がちなのですが、問題の原因はそれぞれにあると思うわけで、別々に考える必要があると思います。
まず、私が今回取り上げるお話のバッテリー問題を定義づけは以下の通りです。
「何も操作しない状況でiPhoneが勝手にバックグラウンドでアクティブ状態を続け、バッテリーを異常消耗してしまう、設定変更では解決しない問題」
これをまず最初に明言しておきたいと思います。つまり、先ほど挙げた前者、使ってみるとバッテリーの減りが早いですとか、使用時間に対するバッテリーの消耗率については今回あえて触れません。
使ってバッテリー消耗するというのはある意味当たり前で、「使ってないのに電池が異常に減る」というのが真の問題点です。満充電してから放置したとしても、寝ているだけでバッテリー切れを起こしてしまうかもしれない問題点が iOS5 というソフトウェアには隠れている。例えるならば「iPhoneの連続待受時間が10時間」とかそういう致命的な問題なのです。
この問題が発症していないユーザーさんは当エントリーを参考にするより、逆に設定などの見直しをした方が改善が期待できると思われます。
あくまでもこのエントリーは私と同様に放置時の異常なバッテリー消耗で日常生活においてiPhoneを利用することに明らかな支障が出ているユーザーさんに捧げるエントリーです。
それを念頭に次からの内容をお読み頂ければと思います。
バッテリー問題の有無の判定方法
以下の2つの判定方法があります。
◆ 体感的に判定する方法
通知をすべてOFFにした状態で、満充電後iPhoneを一切触らず、6時間程度放置(睡眠時にやるのがいいですね)後のバッテリー状態を見る。正常ならば少なくても 90% 以上残っているはずです。異常な場合は50%切っている場合もありますし、下手すると既にバッテリー切れを起こしている場合すら報告があがっているようです。
今回の改善検証にも使いました。
◆ [設定] > [一般] > [使用状況] から [起動時間] と [使用時間] を比較する。
そもそも寝ている間での検証で一切iPhoneには触れていませんので、本当なら使用時間は0分が正しいわけです。その使用時間の状況が問題になるわけでその時間が長ければ長いほど何らかの問題を抱えている可能性があるわけです。ちなみに、最悪の場合、[起動時間] = [使用時間] になっているはずです。
こちらも改善検証に使いました。
原因について
はっきりと言えるものは現時点ではありません。
ただ推測ながら、大きな原因として考えられるのが、MMSと3G回線の取り扱いに関する部分です。これは @motomaka さんが検証して下さっていますが、バッテリー問題は SIM を抜くと改善されます。私も試してみましたが、確かに改善しました。もちろんそれ以外の要素もあるかと思われます。MMS を OFF で運用されているユーザーさんの中には MMS を一時的にモバイルデータ通信を ON にしてすべてのメッセージをダウンロードしたら改善されたという報告もありますが、真偽のほどはわかりません。
バッテリー問題改善の経緯
さきほどの原因の項目でもお話ししましたように、ネットワーク関連の設定では解決できない何かが iOS5 にはあって、意図しない通信などが行われているのではないかと考えた私は iPhone の「設定リセット」をまず試してみようと思いました。あくまで復元は最後の砦ということで、最後に検証してみました。
0. 問題の発生時
Photo by donpy
私の場合はだいたい6時間放置で20%減くらいのレベルでした。この症状は一定ではなく、多いときは50%近く消耗している場合もありました。とにかく放置しているだけでどんどんとバッテリーは消耗し、夜寝る前に100%あったものが起きたら70%台というのがザラでした。とりあえず、充電しっぱなしで運用していました。
スクリーンショットにもありますように、就寝時にスクリーンショットを撮り、起床時に再度撮ったものです。ほぼ、[起動時間]=[使用時間]となっています。もちろんこの間一度もiPhoneを弄っておりません。気になるのは位置情報を利用中を示すステータスバーが紫色だったということです。もしかしたら何らかのアプリがずっと位置情報関連で通信していたことも考えられます。
1時間あたり 2.95% の消耗をしていることになります。
1. ネットワーク設定をリセット
まず試したのは、ネットワーク関連に不具合が出ているという点からすべてのネットワークに関する設定を内部的にリセットすると直るのではないかと考えました。
[設定] > [一般] > [リセット] から、「ネットワーク設定をリセット」を選択してみました。その結果は。。
Photo by donpy
[使用時間]と[起動時間]の関係は崩れたものの、バッテリーの減りそのものはほとんど変化がなかったんですよね。
わずかにバッテリーの状態が改善したのは先ほど申しました、位置情報利用を示すステータスバーアイコンが消灯しているところでした。ネットワーク設定をリセットすることでこの点が改善されたのかもしれませんが、根本的には変わっていませんでした。このあたりは数字に騙されるところですね。実際にはバッテリーの異常消耗は何も改善していないわけですから。
1時間あたり 2.71% の消耗をしていることがわかります。ほとんど変わらないわけです。
2. すべての設定をリセット
では、iPhone内部に設定されているすべての設定をリセットしてみようということで、[設定] > [一般] > [リセット] から [すべての設定をリセット] を選択してみました。
これを実行しますと、すべての設定がリセットされます。ただ、データやメディアは全て残りますので、一見OSの再インストールのような手順を踏みますが、最後に「新しいiPhone」と設定することで、元のiPhoneの環境がそのまま使えます。インストールされているアプリですとか、フォルダなども維持されます。今の環境をそのままに中身の設定だけをリセットできる。そんなリセット機能です。内部設定も設定アプリからの設定項目もデフォルトに戻りますのでもしかしたらこれで解決するかもと淡い期待を寄せていました。
Photo by donpy
もしかしたら「これは・・・」と思えるような結果なのですが、実はそうでもありません。確かに [使用時間] と [起動時間] の関係はかなり改善されたようにも見えます。もちろん、位置情報アイコンも見えません。がしかし、依然 5時間で 13% ものバッテリーを消耗しているわけです。
1時間あたり 2.61% の消耗になりましたものの、劇的改善とは言えないと思われます。
3. iPhoneを消去し、 iCloud からバックアップ復元
既に設定のリセットでも改善しないということは、何をやってもムリなのではないかと諦めムードにもなりかけたわけですが、なら得意の復元やってみようではないかということで、今回用意された iCloud からのバックアップによる復元を試してみました。復元を試す前に 2. までの状態を iMac にローカルバックアップしておきました。iCloud で復元後、元の状態に戻して最後の砦のローカルバックアップからの復元に使おうと思ったからです。
iCloud バックアップからの復元に関してはこちらのエントリーを参考にして頂けると幸いです。
あくまでも PCフリー状態でやりかったので、iPhone の初期化は [設定] > [一般] > [リセット] から、 [すべてのコンテンツと設定を消去] からやりました。
これでクリーンインストール直後の iPhone になります。 その後 iCloud からのバックアップによる復元を実行。そして同様にバッテリーテストをやってみますと。。
Photo by donpy
なんとも微妙な結果となりました。実はネットワークリセット前の状態を iCloud にバックアップを取り(つまりこの実験をおこなう直前)、その後は iCloud バックアップをOFFで運用しておりました。つまり今回復元したのは、元々の問題のある状態のバックアップを復元したということになります。
従って、ネットワーク設定などはそのままのようで位置情報アイコンが紫になって表示されていますし、バッテリー状態も4時間半で14%の消費。
1時間あたり 3.03% の消耗になりました。これはある意味 iCloudバックアップは元の状態を正確に再現している。ということになりますね。いずれにしてもまったく改善は見られませんでした。
4. ローカルPCにバックアップを作成し、USB経由で復元
色々な手を使って、これまでリセット、復元をやってきましたが、最後にやりたいと思っていたのが「ローカルPCにバックアップを作成し、そこからUSB経由で復元」です。最もポピュラーな復元方法で私もこれまで数多くの復元を試してきました。
ローカルPCへのバックアップ及び復元方法はこちらをご参照下さい。
本当なら、今回のリセット復元の実験の前に、iCloudだけではなく、ローカルPCにもバックアップを取るべきでしたが、実はここまで難航するとは思ってませんでした。ですので、単純に iCloud の検証結果とは比較できないものになっています。
今回のバックアップは 実験2. すべての設定をリセット した後の iPhone の状態をバックアップしております。そのデータを iPhone に復元させるとどうなりますか。予想では、実験2. と同じ結果になると思ったのですが。。。以下のスクリーンショットは実験後の結果にあたるものです。どうしても疑わしかったので数回結果を取ってみました。
Photo by donpy
まさに目を疑いたくなるような結果でした。これまでとはまったく違います。[使用時間] はほとんどなくなり、バッテリー消耗量も激減しています。2回目に至っては計測不能(0%)ということになりましたですよ。本当に劇的な改善が見られました。
1時間あたり 0.63% の消耗ということになりました。
結論
以上の実験から言えることは、
・放置時の異常なバッテリー消耗に関しては、ローカルPCへのバックアップからのUSB接続での復元が有効である。
・復元前あるいは復元後に念のため「すべての設定をリセット」も併用すると効果があるかもしれない。
・ネットワークリセットは効果無し
・すべての設定をリセットも単体では効果無し
・iCloud からのバックアップ復元も効果無し
ということになりますね。ただし、今回の復元に至る経緯の中で「すべての設定のリセット」が絡んでいるところから、すべてのアプリの通知機能などもすべてOFFになっていることもあって、余計なバッテリー消耗も押さえられている影響も大きいかと思われます。というわけで、2つめの条件も加えて結論としてあげておきます。
また、 iCloud からの復元は今回残念ながら効果が見られませんでした。それは何を意味するのか。
今回一番モヤモヤが残ったのは「何が原因で放置時にバッテリー消耗をしていたのか」がまったくわからなかったことです。まったく触れてもいないのにバッテリーがどんどん消耗していく現象は明らかにおかしい。設定でも止められない何かがずっとバックグラウンドで動いている。そのためにそのプロセスの監視もログなどでやってみましたが、はっきりとわかりませんでした。原因がわからなければ本当の解決もないわけで、今回の改善例もあくまで対症療法にあたるものです。いつまた何かがトリガーになって再発しないとも限りません。
異常の指標となる [使用時間] と [起動時間]なんですが、これが違っていたとしても実はバッテリー消耗とは直接関係ないというデータも出たところが目新しいところでしたね。あくまでも異常を示す目安にはなるということで、あくまでも放置した状態でどれだけバッテリー消耗が起きているのかが正味のところですのでそこのところは間違えないよう気を付けたいところです。
それともう一つ。一連のバッテリー騒動を見て、どうにも誤解を招きやすいなと思ったことがあります。それは。。
「何をもって問題と感じるのかは人ぞれぞれ違う」ということなんですよね。
バッテリーに敏感な方ならちょっと持ちが悪くなったことで「悪く」感じるわけですし、iOS 5.0.1 にバージョンアップしても「改善されたと感じない」と思うかもしれません。また、本当はバッテリーの問題を抱えている方でも常時充電しているから気付かない。また気にしていない方もいらっしゃいます。
最終的にはユーザーの判断というところになるんですよね。ですから、今回のエントリーは何が問題の本質なのかを最初に宣言し、それについての改善例を挙げてみました。
この検証ならびに改善例は、あくまでも私の環境では改善しただけの話であって、同様の不具合で困っているユーザーさんすべてが改善する保証にはならないことを最後に申し上げておきます。参考になれば幸いです。
それよりも何よりも、一日も早いソフトウェアアップデートでこの不具合が直ってくれることを心から祈っております。長文におつきあい頂きまして誠にありがとうございました。
おまけ すべての設定をリセットした場合の復旧時の注意点
すべての設定をリセットした場合、一見元々使っていた環境と同一に見えるのですが、実はいろいろと設定がリセットされているのが変わっています。
・位置情報利用アプリがすべてリセットされています。(アプリを起動させると再度設定するかどうか問い合わせが来ます。)
・iMessageを再設定( iMessage ON>OFF>ON と切り替えるとパスワードを要求されるので入れると使えるようになります。)
・画面壁紙が消えてしまいます。
・バッテリー表示もデフォルトに戻ってしまいます。
・アラームは消去されます。
・パスワード類は大丈夫(設定はリセットされるが、データは消去されない)
・Safariの設定などもすべてリセットされています。
すべての設定アプリ内を確認する必要があると思います。その他にもあるかと思いますので要確認です。
参考にさせていただいた記事
◇ iPhone 4Sのバッテリー消費問題の対処に有効と思われる唯一の方法。そして注意すべきポイント
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20111109/1320781465
(via もとまか日記乙 )
◇ iPhone 4Sのバッテリー持続時間に関して行った検証、考察、対処についてまとめてみました
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20111105/1320436603
(via もとまか日記乙 )
◇ iPhone 4Sのバッテリー持続時間が劇的に改善したっぽい件。その最重要ポイントについて
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20111104/1320348556
(via もとまか日記乙 )
◇ iOS5デバイスのバッテリー持続時間を計測して分かったバッテリー消費の主要因とは
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20111103/1320262902
(via もとまか日記乙 )
◇ iPhone4Sのバッテリーがネットワーク設定のリセットで回復したという検証結果まとめ。
http://norirow.chips.jp/archives/5264
(via norirow’s Diary )
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